第一章『消えた13番』── 13番鉄塔 ──

 
13番の風景● 次の13番鉄塔は走りながらすぐに見える位置にあった。
しいの木通りから一本奥の住宅街の道路は、比較的に自動車の行き来が少なく、二人は蛇行しながらゆっくりと送電線をたどって行った。
13番鉄塔に到着してみると、先ほどの12番鉄塔と同じように民家に挟まれて建っていた。しかしここでロクマツが
「あれ~!?」と、変な声を出した。
「なに? どうかした?」
「この鉄塔の看板、番号が書いてないよ、ほら、見て!」
「あ、ほんとだ!、番号がない」
これまでの表示板にあった番号の位置が、真っ白のままで空白だったのだ。
「雨で消えちゃったのかな‥‥」とロクマツが言った。
「そんなことあるわけないじゃん、だって『金ヶ作線』ていう文字とかほかのちっちゃい文字とか、ふつうに書いてあるじゃん」
「ほんとだ‥‥、じゃ、この鉄塔、もしかして13番鉄塔じゃないのかもよ?」13番の風景
「そんなことないよ、ずっと電線をたどってきたし、ほかに鉄塔なかったし‥‥」
「じゃあ、どうすんの?」
「え?」
「ここにもカード、投げるの?」
「入れるよ‥‥、まぁ、ここがホントの13番鉄塔かどうかは、次の鉄塔に行ってみりゃわかるよ」
「なんで?」
「だから、次が14番鉄塔だったら、ただ文字が消えてるだけで、間違いなくここが13番てことだろ?」
「まぁ、そうだけど‥‥、でもなんで文字が消えてるの?」13番の風景
「それはまたあとで調査すればいいじゃん。66探検隊としては、まず先を急ぐことが大事なんだよ」と、六太郎はロクマツとの会話がだんだん面倒くさくなってきて、さっさとリュックからトランプのキングを抜き出した。二人が名前を書いたカードを今度は六太郎が素早く金網の中に投げ込んだ。
カードはクルクルと回りながら鉄塔の真下には落ちず、左奥の脚部付近に落ちた。
「六ちゃん、もっと丁寧に投げてよ。ピラミッドパワーがもらえないじゃん」
「ああ、ごめんごめん‥‥、今度はまたロクマツにやらせてやるから、かんべんかんべん」と言って、いかにも急いでるふうにごまかして自転車にまたがった。

 

13番プレート

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