第二章『ヘビ』── 6番鉄塔 ──

 
6番の風景● 次の6番鉄塔を目指して、またクリーンセンター公園の木立と平行に二人は進んだ。
大きな駐車場を越え、公園の中央口を越え、次の曲がり角まで来ると左に曲がった。するとそこにはクリーンセンター公園とは別の小さな公園があった。
看板には『高柳公園』と書いてあり、小さな子供や赤ちゃんを抱いたお母さんたちが数人、立ち話をしている光景が見えた。
二人はクリーンセンター公園とその高柳公園の間の道をさらに進むと、6番の風景ようやく6番鉄塔が見えた。そこはクリーンセンター公園の端っこで、人が出入りしないような薄暗い辺ぴな場所に建っていた。
二人は道に自転車を止め、狭い出入り口から6番鉄塔のもとへ向かった。鉄塔のそばまで行くには足場が悪くぬかるんでいたし、たくさんのクモの巣もじゃまをしていた。
六太郎はちょっと長めの棒を拾ってくもの巣を払い、なるべく足場のいいところを選びながら鉄塔の結界まで進んだ。そしてふと後ろを振り返ってみると、一緒に付いて来ていると思っていたロクマツは、道の入り口付近で立ち止まって六太郎を6番の風景見ていたのだ。
六太郎は心の中で「なんだよ、あいつ。俺だけにやらせ‥‥」と舌打ちをした。
結界でリュックを下ろそうとしたら、なにやらカメムシのような気持ち悪い虫が地面にいたので、リュックは下ろさなかった。やぶ蚊が耳元をかすめて飛んで行った。
六太郎はどうして自分だけにこんなに嫌な場所に来なくちゃいけないんだろうと、だんだんロクマツに対してイライラしてきた。
トランプケースから素早く『スペードの6』を取り出すと、自分の名前と日付をペンで書いて、今までよりもだいぶ雑に結界内にカードを投げ込んだ。そして素早くリュックを背負うと、また棒を振りながらぬかるんだ地面を後戻りして道路の出口までたどり着いた。そしてロクマツを睨んで、
「なんで付いてこなかったんだよ!」
とあきらかに不満げに言った。ロクマツは六太郎の剣幕にすっかり気落ちして、下を向いてしまった。
「おまえの名前、書かないでカード投げたからな!」6番の風景
と、六太郎は意地悪な言い方をした。するとロクマツは肩に食い込んだリュックの肩ヒモを両手でギュッと握って下を向いたまま、泣きそうな声で、
「だって、蛇が出るんじゃないか、怖かったんだもん‥‥」と言った。
それを聞いて六太郎は「そう言えば‥‥」と心の中で思い出していた。臆病なロクマツは確かに蛇が一番の苦手で、以前このクリーンセンターのどこかで蛇を見たことがあるとも言っていたのだ。6番の風景
「蛇くらい、どおってことないじゃん‥‥、まぁ、いいよ。蛇が出そうなとこがまたあったら、俺が一人で探検してやるよ」
そう言うと、ロクマツは顔を上げ、
「ごめんね‥‥、じゃ、別の危険の場合は今度俺がやるってことにしようか? 六ちゃん」
と言った。六太郎はロクマツが多少は気にしてるんだなと思い、
「なんだ? 別の危険て、ふふふ」と笑った。そして二人はまた、次の鉄塔を目指して送電線沿いに県営住宅の前の道を自転車で走って行った。

 
 

6番プレート

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