第一章『ロクマツ断念?』── 17番鉄塔 ──

 
17番の風景● お肉屋さんで買ったコロッケを、それぞれのリュックに詰めた二人は次の17番鉄塔に向かった。
送電線を確認すると、ちょうどお肉屋さんの前にある曲がり角が進行方向だった。その道には一方通行の標識が立っていて、
「こっちから入っちゃいけないんじゃないの?」と言うロクマツに、
「こういう道は、自転車は通っていいんだよ」
と、六太郎は自転車でズンズン進んで行った。ロクマツも後を付いて来たが、すぐに六太郎は道路の右側のガードレールの内側に自転車を止め、
「この辺が、いいんじゃない」
と言いながら背負っていたリュックを下ろした。道路の右側には広い敷地があって、そこは自動車教習所になっていた。横で自転車のハンドルを持って立っているロクマツに、
「コロッケ、食べよう」と言った。
ロクマツは嬉しそうにさっき入れた紙袋の中から、一番大好きなカレーコロッケを取り出して六太郎の顔を見てニッコリと笑った。六太郎は普通のコロッケを取り出した。
二人は道路の反対側の教習所を見るようにして、ガードレールに腰掛けてコロッケを食べ始めた。まだ揚げたてだったのか、サクサクのころもと熱々のジャガイモが空腹を満たした。
「ソースかけなくても、うまいね」
とロクマツが言った。そして二人はまた水筒を取り出して、それぞれの中身を飲んだ。
目の前の教習所は昼休みなのか、動いている車もなく、人もまばらだった。六太郎はさっきカードを投げた16番鉄塔の方を振り返ってみたが、そこからはもう鉄塔は見えなかった。17番の風景17番の風景17番の風景17番の風景17番の風景

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