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【第二章】06 大ピンチ!

第二章『大ピンチ!』── 3番鉄塔 ──

3番の風景● 難所の4番鉄塔を通過した二人は、次の鉄塔を目指してまた送電線をたどった。
送電線は4番鉄塔の奥の林の向こう側に伸びていて、これまでで一番行きにくい方向、つまり反対方向に大きく回り道をしなければならなかった。
一旦くすのき通りに戻って松戸方面へわずかに進むと、新しいコンビニの横に細い道があったので六太郎はそこを進むことにした。しかしその細い道は突き当たりがL字型になっていて、曲がった方向は送電線とはまたも逆になってしまった。それでもその道以外に進むべき道はなく、六太郎は送電線を気にしながらどんどん自転車をこいだ。
次の鉄塔の方向とは逆方向を走っている六太郎は、何度も振り返って上空をみたが、やがて送電線さえも見えなくなり、だんだん不安になってきた。
後ろから黙って付いて来るロクマツは、前を行く六太郎を信頼しているような真っ直ぐな目で必死に自転車をこいでいた。3番の風景
六太郎はとにかく進むしかなかった。住宅街をズンズン進んでやがて十字路まで来ると、左に90度曲がり、さらにまたすぐに次の十字路をまた左に90度曲がって、やっと方向を修正することができた。ただ、180度回転したその直線の道のはるか遠く先にも、送電線は見えなかった。それでも六太郎はこの道を真っ直ぐ進んでいこう思った。実際、それしかなかったのだ。
六太郎がこうまでして必死に自転車をこいでいるわけは「1番鉄塔の先には、いったい何があるんだろう?」という強い興味があったからだ。
残すはあと3つ。1番鉄塔は、もう、すぐ近くにまで迫っているのだ。3番の風景
住宅地の長い直線道路を進んで行くと路地になっていた。そしてそこで二人は一度、自転車からおりた。そこには六太郎の目を奪わせる光景が広がっていた。
金網で囲まれた長方形の広大な人工の調整池。六太郎にはそれが巨大なプールのように映った。しかもそのはるか先には、大好きな鉄塔が何本も連なっている景色が見えたのだ。
二人が追いかけていた金ヶ作線の送電線と、それとは違う別の種類の送電線が、ある一点に向かって集束するかのような風景がそこにあったのだ。
「1番鉄塔‥‥」と、六太郎はここの中でつぶやいた。
数々の送電線が集まるその場所。もうすぐそこへたどり着けるのだ。この探検の中で一番遠い距離を持っている4番鉄塔から3番鉄塔への道のり。六太郎は次の3番鉄塔のある方向を見つめて、ロクマツにポツンと言った。
「あと3つだな、ロクマツ」3番の風景
「そうだね」
「つらくないか? おまえ。ほんとは、もう帰りたいんじゃないんか?」
「俺‥‥、疲れたよ、もうすぐ夕方になるし‥‥、ほんとはもう帰りたいよ‥‥。だけどさ、ここで帰ったら、今までの分がパーになっちゃうから、やっぱり、帰らない」
そう言ってロクマツの方が先に自転車にまたがった。
「マジで大丈夫なのかよ」
と言って、六太郎は笑った。そしてリュックの中から最後に残しておいたカレーコロッケの袋を取り出して、紙ごときれいに二つに分け、半分をロクマツに渡した。
「隊員の食料、これで最後だな」
「サンキュー」3番の風景
二人は遠くに連なる数本の鉄塔の方向を見ながら、半分ずつのカレーコロッケをなるべく急いで食べた。
 
● 二人はまた、まだ遠くに見える金ヶ作線の送電線を向かって自転車をこいだ。
巨大な調整池の周囲をグルッと回り、十字路を右に曲がってしばらくすると、ようやく目指す3番鉄塔が見えた。しかしその鉄塔は、道路よりもずいぶん高い位置にあり、その場所は下から見ると公園のような場所だった。
六太郎はその場所に行くための道を探し、また大きく迂回する道を見つけて、坂になっている道を自転車で進んだ。そしてどんどん行くと、その一段高い公園のように見えた場所が、実は小学校だということが分かった。3番の風景
『柏市立高柳小学校』と書かれた校門の前に自転車を止め、恐る恐る校庭の方を覗いてみた。
冬休み中の学校の校門は開けてあり、勝手に入っても大丈夫そうだったので、思い切って二人はリュックを背負って中に入ってみた。
鉄塔の建っている付近を目指して歩いていった二人は、やがて校庭の隅っこで遊んでいる数名の児童たちの姿を見つけた。
小学校に建っている鉄塔は、これまでの鉄塔と同様に金網に囲まれていて入れないようになっていた。その横には人工的に作られた2メートルくらいのコンクリート製の遊具的な山があり、児童たちはそこで遊んでいたのだ。
二人が黙ってその横を通り、鉄塔の前でリュックを下ろすと、児童たちはいったん遊ぶのをやめてジロジロと怪しむような視線を向けてきた。六太郎はカードにサインをしながら、
「何か言われても、おまえは知らんぷりしてろよ」3番の風景
と言って、ペンとカードをロクマツに渡した。ロクマツが名前を書き終えると、六太郎は結界に向けて素早くカードを投げ入れた。児童たちの一人が「あ!」という声を上げたが、六太郎は一切聞こえないふりをしてリュックを背負って校門に戻ろうとした。
「ちょっと、待ちなさいよ」
女の子の声がした。仕方なく振り向くと、高学年らしい女子が4~5人が固まって、二人を見ていた。そのほかにも3・4年生くらいの数人の男子が、なんとなく二人を見ていた。小さい子たちも10人くらいいたが、その子らはキャーキャー言いながら山に登って遊んでいた。
二人を呼び止めたと思われる気の強そうな女子が腕組をして、
「あんたたち、いま何を投げたの?」
と厳しい顔で質問してきた。六太郎は、この手の女子は言い合いになったら絶対に適わないということを、経験則で知っていた。
「カードだよ、投げたのはトランプのカード‥‥」3番の風景
「なんでそんなもん、ここに投げるのよ!」
「俺たちの遊び‥‥、根性投げっていう」
「なに、それ? ふざけないでよ。だいたいあんたたち、見かけない顔だけどこの学校の生徒じゃないでしょ?」
「‥‥‥‥」
「ちょっとマサミ、職員室に行って誰か先生呼んできて」
と、少し小さい女の子に向かって指示をした。六太郎はロクマツの方を見て、ロクマツがすっかり怯えたような顔をしているのが分かっていたが、その女子に何も言い返せなかった。すると女子の中のもう一人が
「マサミちゃん、ちょっと待って!」
と呼び止めた。六太郎はその女の子を見た。
「先生連れて来ないでいいよ、大丈夫だから」
と言った。水色のトレーナーを着たその女の子は、あきらかに六太郎たちをかばってそう言ったのだ。
「なんで?」
と、気の強そうな女子がきいた。3番の風景
「この子たち、べつに悪い子じゃないから」
と言ったあと六太郎に、小さく手で「早く出てったら」というような合図をした。
六太郎は「今しかない」と思い、横で固まっているロクマツの手を取って校門まで逃げるように走り出した。後ろの方でさっきの女子たちが何やら言い合いをしている声が聞こえたが、とにかくこの学校から脱出しなければ、と必死だった。校門の外まで出ると、さすがに誰も追いかけては来ず、
「いや~、ちょっとヤバかったな」
と、ロクマツに謝るような口調で言った。
「ねぇ、さっき、助けてくれた子、六ちゃんの知り合い?」
「え? ぜんぜん知らないよ、誰なのか」
「ふう~ん‥‥」
と言うと、ロクマツは自転車のハンドルを握って歩き出した。

3番プレート

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