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【第二章】02 隊員2号

第二章『隊員2号』── 7番鉄塔 ──

7番の風景● クリーンセンターのゴミ処理場を出て、道なりにクリーンセンター公園の木立を自転車で走っていくと、次の7番鉄塔まではわずかな距離だった。
六太郎が後ろを確認すると、やはりあの子は、キィキィという自転車のさび付いた音を立てながら必死に付いてきていた。
クリーンセンター公園の角を曲がったところに徒歩と自転車用の出入り口があり、そのすぐ横に7番鉄塔は建っていた。
公園の周りを囲む背の高い椎の木よりもはるかに高く、そして樹木と調和しているように見えた。その鉄塔も8番鉄塔と同様にここでも腕を直角に曲げ、送電線を急角度でつないでいた。
二人は鉄塔のすぐ横に自転車を止め、きれいに手入れされている結界の中に入ってリュックを下ろした。ロクマツはいま自分たちが入ってきた方向をこっそり確かめると、
「あいつ、やっぱりこっちを見てるよ」と言った。
「ねぇ、俺、文句言ってこようか?」
「やめとけよ、あの子、おまえよりも小さそうじゃないか」
「だって、なんで俺たちを見張ってるんだか、気になるじゃん」
「じゃ、聞いてくりゃいいじゃん」
と言うと、ロクマツは意を決したかのように、ゆっくりとその子の方へ歩いていった。六太郎も様子を気にしながらも、儀式用のカードに日付と名前を書いていた。そして1分もしないうちにロクマツはその子と一緒に歩いてきた。
「こいつ、何してんの?って聞くから、66探検隊だ!って、教えてやったんだよね。そしたら、カード置くとこを見たいっていうから、まぁ、いいかと思って連れてきた」
その子はまるでモヤシのような細い顔をして、薄汚れた黄色いパーカーと薄汚れたジーパンと運動靴を履いていた。どう見ても人懐っこい子どもには見えなかった。
「きみ、何年生?」
「2年‥‥」
「どこの学校?」7番の風景
「学校は行ってないから‥‥」
「なんで? 冬休みだからってこと?」
「父さんが、学校行かなくていいって」
「ふう~ん‥‥、名前、なんていうの?」
「ヤスオ」
「じゃぁ、ヤスオ、おまえこのカード埋めてみるか?」
と六太郎が言うと、ロクマツは驚いて、
「え? そいつにやらせるの?」ときいた。
「やってみたいか? ヤスオ。もしやりたいんなら、おまえ隊員2号にしてやるよ」
「ええ~~?! こいついきなり隊員2号にしちゃうの?」
「バカだな、ロクマツ。おまえが1号だろ? 1号の方が2号よりも上なんだぞ」
「え? あ、そっか‥‥、じゃぁ、2号にしてやってもいいか。どうする?ヤスオ、隊員2号になりたい?」7番の風景
「なりたい」と小声で答えた。
「よし、わかった。そのかわりここだけだぞ。ヤスオはまだ2年だから、ここから先の探検は無理だ。それでもいいなら、2号にしてやるけど、どうする?」
「ここだけ、やりたい」
とヤスオは言った。六太郎はカードとペンをヤスオに渡して、
「ここにヤスオって書いて」と言うと、汚い字で『やすお』と平仮名でサインをした。六太郎はピラミッドパワーの不思議な力について、ヤスオに説明してやった。ヤスオは分かったのかどうか判断しにくい顔をして、コクリとうなづいた。それから三人で棒を拾って、結界の中央に穴を掘った。
すると突然、その横を大人が二人通りかかった。50歳代くらいの夫婦らしき二人は、身軽な格好でそれぞれ脇にスポーツバッグとラケットを抱えていた。そして女の人の方がチラっと、六太郎たちを眺めたが何も言わずに公園の奥の方に歩き去って行った。
「何か言われるかと思っちゃったよ」とロクマツは安心した。
「この奥って、何かあったっけ?」7番の風景
「テニスコートがあるよ」
「そっか、じゃ、また誰か大人が来ないうちに早くやっちまおうぜ」
と掘った穴にカードを埋めるよう、ヤスオに言った。ヤスオは手を使って丁寧に土をかぶせて、その上をまた手で丁寧にならした。横で見ていたロクマツは雑草を引きちぎってきて、上からパラパラとまいてカモフラージュした。
「よっしゃ~! これで完全犯罪が成功だぜ~」
と、六太郎はわざと悪そうな顔をロクマツとヤスオに向けて笑った。
「完全犯罪、成功や~」
と、ロクマツは関西弁でおどけていた。ヤスオは手についた土をはたいて落とし、そのあとジーパンでゴシゴシこすって綺麗にした。
「ヤスオ、これやるよ」
と言って、ロクマツは最後のコロッケが入っている紙袋を出した。
「なに、これ?」7番の風景
「隊員用の食料、中身はコロッケ‥‥、嫌い? 公園で俺たちがメンチ食べてたの見てただろ?」
「大好き」と言って、ヤスオは初めて笑った。六太郎は、
「ロクマツって、なかなかいい先輩じゃん」
と冷やかし気味に言った。二人はヤスオとそこで別れて、次の鉄塔を目指して自転車に乗り送電線をたどって進んだ。
ロクマツが後ろを振り向くと、ヤスオはさび付いた自転車の横に立って、すでにコロッケを食べながら手を上げていた。ロクマツも軽く手を上げ、
「またな~!」と言った。

7番プレート

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