● 松戸市六実・六高台・五香、及び柏市しいの木台・高南台・高柳地域の生活・便利情報などの話題を提供いたします。

【第一章】07 謎のびゃくしん類

第一章『謎のびゃくしん類』── 15番鉄塔 ──

15番の風景● 二人は再び自転車に乗って、送電線をたどりながら次の15番鉄塔へ向かった。畑の横の細い道は野馬土手の名ごりがある旧道で、人や車の行き来もけっこう多い。
二人は他の自転車や対向車に気をつけながら、道の突き当たりの狭い路地を左に曲がった。
この辺りは、しいの木台の新興住宅地に比べると古くからある町並みで、一本いっぽんの通りも狭い。そんな道路を、車やバイク、自転車、歩行者などとぶつからないように気を使いながら上空の送電線をたどって行った。
何度か目の角を曲がったところで、目指す鉄塔のてっぺんが見えてきた。
二人は鉄塔に近づくためにどんどん自転車をこいだが、鉄塔の建っている場所は青いビニールのネットに囲まれた果樹園の敷地内だということが分かった。
「ここ、たぶん梨畑だよ」とロクマツが言った。
「どこか入れる場所、知ってる?」
「んんん‥‥、あんまりこの辺りは来たことないし、分かんない」
「じゃ、とりあえず、グルッと回ってみて入れそうなとこを探そうぜ」
「わかった‥‥」15番の風景
二人はまだ遠くに見える鉄塔に注意しながら、果樹園の周囲の道を自転車でゆっくり探検することにした。でも、もともと人が入ってこられないように張ったネットなのだから、そう簡単に入り口らしき場所はないだろうと六太郎は考えていた。
ネットに沿って数回道を曲がると、小さな入り口らしき場所があった。ただ、入り口といっても公園のように誰でも自由に入れそうな雰囲気ではなかった。近くには作業用の軽トラックや納屋などがあり、いわゆる『関係者以外立ち入り禁止』の雰囲気でいっぱい。
「ロクマツ、ここから入るのはマズそうだな」
「みたいだね、もっと先、行ってみる?」と自転車に乗ろうとした時、
「あれ、この看板、なんだ?」とロクマツが言った。
「ん? あ、なんか書いてあるな」
六太郎は入り口付近の塀に貼られた看板の字を読んだ。
「なんて書いてあんの?」
「ちょっと待って‥‥‥‥‥‥、びゃくしん類‥‥‥、植栽‥‥‥、規制区域指定‥‥‥‥」
「なんだって?」
「なんかよく分かんないけど、びゃくしん類てのが、規制されてる区域っていうことみたいだな」
「びゃくしん類? なにそれ?」
15番の風景

注)※びゃくしん類とは、かいづかいぶき・びゃくしん(別名いぶき)・たまいぶき・くろいぶき・たちびゃくしん・みやまびゃくしん(別名しんぱく)・はいびゃくしん(別名そなれ)・スカイロケット(別名えんぴつびゃくしん)・ねず(別名ねずみさし)・はいねず(別名おおしまはいねず又はみやまねず)をいいます。松戸市では特産である《梨》を守るため、びゃくしん類を媒体として病原菌(赤星病)が梨に寄生し、被害を与えないよう『赤星病防止条例』を施行しています。


「びゃくしんってゆうのは‥‥、たぶん‥‥‥、なんか動物みたいなもんじゃねぇか? ハクビシンとか、そういう小さい野性の動物かなにかだと思うよ」
「ふ~ん‥‥、で、それがこの辺に住みついてるってこと?」
「たぶん、そうゆうことだな‥‥、びゃくしんっていうのは、かなりヤバイやつかもしれないな‥‥」
「ヤバイって、凶暴な動物?」
「まぁ、そうだろうな。こうやってわざわざ看板に書かれてるくらいだから、毒の強さは80以上はあるんじゃねぇか」と、ロクマツをおどかした。
「毒の強さは80以上?! まずいねそれ、六ちゃん、早くここから離れた方がいいんじゃない?」
「んだな、じゃ、も少し先に行ってみるか」15番の風景
「うん、早く行こ」
二人はまたネット沿いに進み、さらにはネットの先の住宅地に沿って、鉄塔の入り口探しに自転車をこいだ。でも、なかなか入り口は見つからなかった。
六太郎の後ろから付いてくるロクマツは、鉄塔のことより自分の背後を気にして何度も振り返りながら自転車をこいでいた。もともと動物嫌いで臆病なロクマツは、看板に書かれてあったびゃくしんが追いかけてくるんじゃないかと不安だったのだ。その後、さっきの入り口からほぼ180度くらい回った位置にきて、鉄塔が二人のすぐ近くにまで迫ってきた。二人は鉄塔が見えるギリギリのところまで自転車で進んだ。
「ロクマツ、ここだな」
そこはアパートと駐車場のはざまのスペースで、鉄塔がネットぎりぎりに建っていた。
「ここが鉄塔に一番近い場所だな」15番の風景
「でも、どこにも入り口なんてないよ」
「たぶん入り口はさっきの場所だけなんじゃないか‥‥、仕方ないよ」と言うと、六太郎はネット付近の駐車場に自転車を止めた。ロクマツも隣に止めて、
「どうすんの?」と不安そうに聞いてきた。
「ちょっとネットが高いけど、うまく投げればなんとか入るかもよ」
六太郎はトランプケースから“クラブの5”を抜き取り、マジックペンで“15”に書き換えて名前を書いた。
「ロクマツ、投げてみるか?」
「いやっ、ここは任せるよ」とおじけづいている。
「おまえ、びゃくしんのことが気になってんだろ、怖いんだろ」
「違うよ! だってこんなにネットが高いし、もし失敗したらカードがもったいないじゃん!」
それを聞いた六太郎は、ニヤっと笑って15番の風景
「わかったよ、じゃここは俺が投げてやるよ!」と、いかにも恩に着せるように言った。ロクマツが自分の名前を書き終えると、六太郎は3メートル以上あるネットの向こうの鉄塔目掛けて“クラブの15”を回転をきかせて投げ込んだ。カードはクルクルと回りながら、鉄塔の脚の部分に当たってから跳ね返り、偶然にも鉄塔のほぼ真下辺りに落下した。
「お! よっしゃ~!!」
「うわっ、やっぱ六ちゃんすごいや、ズバリ真中に落ちたね」
「まあね」と言って、ロクマツに親指を立てて見せた。

15番プレート

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